病院は患者の命を預かるだけでなく、高額な医療機器や厳重な管理が必要な医薬品、個人情報を含む電子カルテなど、多くの重要資産を扱う施設です。医療従事者が昼夜を問わず業務を行う一方で、夜間や休日はセキュリティの手が届きにくくなる場面も少なくありません。そのような背景から、近年では防犯カメラを設置・強化する病院やクリニックが急増しています。不審者の侵入対策、患者やスタッフの安全確保、薬剤室やナースステーションの監視、トラブル防止など、防犯カメラは多面的な役割を果たしています。
本記事では、病院における防犯カメラの必要性や設置ポイント、具体的な導入事例までを、専門的かつわかりやすく解説します。
目次
なぜ病院に防犯カメラが必要なのか?
医療機関における犯罪統計
医療機関における侵入盗(いわゆる“病院荒らし”)
- 令和3年(2021年):全体の侵入盗件数:37,240件
⇒うち病院・診療所等での発生件数:295件
- 令和4年(2022年):全体の侵入盗件数:36,588件(前年より652件減)
⇒医療機関における発生件数:545件(前年から250件増)
全体では侵入盗の数は減少しているものの、医療機関での被害は増加傾向にあります。
※出所:警察庁「犯罪統計資料(令和4年1~12月確定値)」
医療機関で発生する主な犯罪の種類
不法侵入・侵入窃盗(薬品・機器・金品)
個人情報の漏洩(カルテ等)
暴行・傷害、ストーカー行為
放火、異物混入、器物破損、脅迫など
患者・職員の安全確保のために
医療施設は一般開放されているため、不特定多数の人々が出入りする環境です。特に救急外来では、精神的に不安定な状態の来院者や付き添いの家族が感情的になり、職員に対する暴言や暴力といったインシデント(事故や事件には至らなかったものの、それに近い状態)が発生するケースもあります。こうした状況に対して、防犯カメラの存在は抑止力として非常に効果的です。また、万が一トラブルが発生した場合でも、録画映像をもとに客観的な事実確認が可能となり、スタッフの安全を守るための証拠として活用できます。
不審者の侵入や犯罪の早期発見
とくに夜間の時間帯や無人エリアでは、無断侵入や盗難のリスクが高まります。実際に、精神科病棟や夜間救急対応クリニックでは、外部からの不審者侵入や備品の持ち出しといった事案が報告されています。
防犯カメラを出入口・通路・エレベーター前などに設置し、リアルタイムで監視することで、こうしたリスクを早期に察知し、迅速な対応が可能になります。
薬品・医療機器の管理と盗難防止
薬剤室や薬品庫には、高価で厳重な管理が必要な医薬品が多く保管されています。中には特定の指定医薬品のように、法的に厳しい管理義務があるものも含まれており、内部不正や盗難リスクを無視できません。防犯カメラはそのような重要エリアの管理強化に欠かせない設備です。録画映像を使ったログ確認により、誰がいつ出入りしたのかを明確に記録でき、事故や不正の証拠としても有効です。
病院に適した防犯カメラの種類と設置場所
おすすめのカメラタイプ
病院のような複雑な施設では、用途や設置場所に応じたカメラの選定が重要です。
ドーム型カメラ
天井に設置するタイプで、コンパクトかつ目立ちにくく、ロビーや待合室、病棟などでの設置に適しています。視界も広く、威圧感が少ないため患者にも安心感を与えます。
バレット型カメラ
屋外や駐車場などでよく使われる形状で、カメラで監視していることを明示したい場合に有効です。視認性が高く、威嚇効果もあるため不審者対策に最適です。
PTZカメラ(パン・チルト・ズーム)
広範囲をカバーできる高性能タイプで、遠隔操作によってカメラの向きやズームを自在に変更できます。広い病院敷地やナースセンターからの一括監視に適しています。
効果的な設置場所の例
防犯カメラの効果を最大限に活かすには、監視が必要なポイントを把握した設置が不可欠です。
- 正面玄関・裏口:外部からの出入り口を確実に監視
- 薬品庫・倉庫:高価な医薬品・備品の盗難防止
- ナースステーション・病棟通路:夜間や無人時間帯の患者安全確保
- 待合室・受付:トラブル防止とクレーム対応の記録
- 駐車場・エレベーター前:事故・不審者侵入の監視
防犯カメラ設置によるメリットと注意点
導入による主なメリット
病院における防犯カメラの設置は、単なる「監視」にとどまらず、業務の質と安全性を向上させる多くのメリットがあります。
- トラブルの抑止と早期対応
- 患者と職員の安心感向上
- クレームや事故時の証拠確保
- 薬品・備品の適正管理と不正防止
これらにより、病院全体のリスクマネジメント強化に貢献します。
設置にあたっての注意点
一方で、防犯カメラを設置する際は法令順守とプライバシーへの配慮が不可欠です。
- 更衣室・トイレなど、私的空間への設置は禁止
- 録画データの保存・管理方法の整備(アクセス制限含む)
- 個人情報保護法への対応と従業員教育
- カメラ設置の目的を明示し、患者・職員への周知
これらを踏まえた設計・運用が信頼性を高める鍵となります。
防犯カメラ導入に活用できる補助金・助成制度
防犯カメラ導入の補助金・助成制度について
現在、国や自治体によって防犯カメラ設置の費用を一部サポートする補助金・助成制度が実施されています。
ただし、対象や金額、申請条件・手続き方法などは地域によって異なります。
防犯カメラ補助金って?
- 国や自治体が、防犯カメラの設置費用をサポートしてくれる制度です。
- 町内会や商店街、マンション、個人宅、小さなお店など、いろいろな方が利用できます。
もらうためのポイント
- 設置する前に申請が必要!
- 予算がなくなったら終わりなので早めに。
補助金・助成制度の有無や条件・申請方法は自治体ごとに異なります。
防犯カメラ導入にあたり補助金をご検討の場合は、直接各自治体または公的機関のHPなどで最新情報をご確認ください。
防犯カメラの運用・管理方法も重要
映像データの保存期間と活用方法
録画映像は、事件・トラブル時の証拠としての役割を果たすため、適切な保存期間の設定が求められます。
- 一般的な保存期間は「7日~30日間」
- 長期保存が必要な場合はHDD保存型システムの活用がおすすめ
- アクセスログを残す機能もセキュリティ向上につながります
定期的なメンテナンスとチェック体制
設置したまま放置していては、カメラの効果は発揮されません。
- 定期点検(定期メンテナンス)による映像の確認・画角の調整
- 録画機器の容量チェック・バックアップ体制の確認
- 職員向けの防犯研修・マニュアルの整備
これらを継続的に行うことで、防犯カメラの運用は実効性を持ちます。
株式会社セキュリティーフォーユーが行った防犯カメラの病院設置事例
眼科クリニック様での事例
大阪府にある眼科クリニック様へ防犯カメラを導入いたしました。
患者様への威圧感が無いように、室内にはドーム型の防犯カメラを設置、また、音声も記録できるように、マイクも設置いたしました。
これにより、目に見えてトラブル件数が減少し、職員からも「精神的に安心して勤務できるようになった」と高評価を得ています。
内科・消化器科クリニック様での事例
和歌山県和歌山市に新しくできた内科・消化器科クリニック様へ、防犯カメラを設置させていただきました。
駐車場や出入口には屋外用のバレット型カメラを、受付や待合スペース・廊下などにはドーム型の防犯カメラを設置し、駐車場トラブル防止や受付・待合スペースの様子を確認できるようプランニングいたしました。
鮮明な映像にとても喜んでいただけたようで、後日、追加のご依頼をいただきました。
まとめ:病院の安全対策には防犯カメラが欠かせない
現代の病院において、防犯カメラは単なる「監視ツール」ではなく、安全管理・患者満足度向上・トラブル防止を支えるインフラとして重要な存在です。病院における防犯カメラの必要性や設置ポイントという視点から、安全性の高い医療環境づくりを目指す上で、防犯カメラの活用は今後ますます求められていくでしょう。
防犯カメラ導入をご検討中の病院関係者様へ
セキュリティーフォーユーでは、病院やクリニックをはじめとする医療施設に特化した防犯カメラシステムの提案・設計・設置・運用支援を一括して行っております。現地調査やお見積もりは無料で承っております。
「安全な医療現場づくり」に向けた第一歩として、ぜひお気軽にご相談ください